悠久幻想曲≒0第1話「集められる記憶」

見えない物に価値はあるの?
見える物だけで満足できる?
皆の記憶を辿って訪れた知性の迷宮に
私だけの価値を見出す。
様々な記憶、忘れたい記憶、他から認められることで存在する事が出来るの。
認められない借り物の記憶には意味がないのかな?
そんな私に意味があるのかな?

フェイズⅠ<チトセの休日
「それにしても今日は酷い人ごみだなそんなにひまな人間が居るとはな。」
今日はリヴェティス劇場の創立記念祭、今日だけは敷居の高いこの劇場も様々な催し物が催されている。そして例によって娯楽を求めた住民が押しかけてくる。
「まったく暇人は何処にでも居る物だな」
 そうして人が集まるところには事件が起こると言うわけで青年団が動く、それがこの街の日常、そんな青年団から派遣されたのがカミラ・ソルティアだった、そんなカミラの元に劇場の中から一人の少女が近づいてきた。
「お疲れ様、カミラ〜!」
「チトセか面倒なのが来たな」
「面倒って何よ!せっかく人が差し入れ持ってきてあげたのに。」
「・・。貰う。」
 カミラに面倒扱いされた少女、チトセ・ローゼンベルグ、彼女はエンフィールド学園に通う生徒なのだが私立であるエンフィールド学園の学費をこのリヴェティス劇場のバイトなどで稼いで通っている。今日は創立祭と言うことも有り、臨時のシフトに入った次第だった。
「素直じゃないねぇ、まぁ確かに人は多いわね・・ホントならアタシも今日は休みだったってのに」
 するとそんな嘆きをよそに、またひとつの集団が来場してくる。
「さあ、お嬢様がた劇場に到着しましたよ。」
「ありがと、クイック君!」
 珍品そろう文月堂に置いてあった大きな日傘からプラムとローラ、そしてクイックの姿があらわれる。
「早く中に入るりゅ〜」
「そうだね、まだその服でも難しいか・・」
プラムは自分の身体に有害な太陽をさえぎるセーー服を買ってからと言うもの、よほどその服が気に入ったのか暇を見つけては遊びに来ている。一応クイックの方も可愛い女の子(本人的にはもうちょっと年が有っても良いらしい)を相手にしているのでその後も着替え用に新たに服を仕立てて居たりする
「クイック君!今度、私にも何か可愛い洋服作ってよ!」
「商談だったらいつでも歓迎するけどいったいどんな服が好みなんだい?」
「ンとねリボンのたくさんついたの!」
 そうお定まりの台詞が返ってくる。因みに今回のプラムへの報酬としてクイックがここに誘って居たりもする・・そんな様子を知る余地も無く、プラム達を見つけたカミラがその集団に声を掛ける
「なんか大変だな。」
「あぁ、カミラ様、女性は大切にしないといけませんよ。それより今日も青年団のお仕事ですか?お疲れ様です。」
 いきなり後ろから声を掛けられたクイックはとっさに営業口調が出てしまう。
「あまり堅苦しいのは性に合わないからやめてくれ」
「商売柄が抜けないんだよ。ほらチャントした保護者が居ないと子供達が危険なご時世だからね。」
「まぁ、今日は安心して楽しんでいくと良い。」
「そうさせてもらうよ」
 するとクイックとカミラに構ってもらえなくなったチトセとプラムが顔を見合わせる
「な、何?プラムちゃん
「私と同じ匂いがするりゅ」
「??」
 二ヤリと微笑んで立ち去るプラム。何か引っかかる言い方を残して消えるプラムにチトセも困惑するばかりだ。
「何なのよ〜!」
くいっ、クイッ。
 そうしているとチトセの服をまた別の子供が引っ張ってきた。その声にチトセが振り返った瞬間当たりいったいの喧騒が嘘のように静まり返ったように感じた
「はいお姉ちゃんに何か用かな?」
 昼なのにパジャマを身につけたリムだ。しかし次の瞬間、リムはチトセを飛び上がらせるような一言を放った。
「チトセお姉ちゃん、ううん。シエルお姉ちゃん。」
「えっ?なんで・・その名前を?」
目の前の少女は他人は知る余地の無いもうひとつの私を知っている。それは彼女の両親も知らないはずの事だった。それをリムは口にした
「どうしてそれを・・・?」
「私はこの世界の記憶を守る者・・そして記憶に守られている者」
「えっ?それってどういう?」
相変わらず謎に包まれた言葉に振り回されるチトセがリムにその事を問いただそうとしたときには既にリムの姿は消え、当たりの滞っていたって喧騒も元に戻っていた
「あっ、あれ?居、居なくなってる・・。」


フェイズⅡ<もうひとつ劇場
「おぅリムや!仕事終わったん?早く座ろうにゃ!」
「フォグちゃん。ううん、ここは辞めにする、」
「そうか?まっ、俺様には関係ないことだし仕事が終わったんなら後は楽しむにゃ!」
 いきなり消えた少女リム、でも彼女は意外にまだ近くに居たりする。
「そうだね劇場はいろんな人の思念や思い出が集まるところ。」
「それに子供がいっぱい居るから狙い目にゃりん!」
「別に狙って居るわけじゃないんだけどな。そろそろ危険だから。それに記憶に残らない私や人語をしゃべる猫が何を言っても街の人は耳を傾けないからせめて私達がここに居ることが大切なの。」
「ううっリムの言うことはいっつも理解できないにゃ・・ほらもう開演にゃ!」


「この曲・・エンフィールドノクターンね。」
「プーは始めての曲りゅ。」
 開演したコンサートには様々な演奏、そして詩で飾られて行った
「つぎはチトセさんが歌うみたいだね。」
 クイックが保護者宜しくローラとプラムに解説していく。公演は順調に進んでいる様に見えた・・

「うわぁ、満員だよ・・・久しぶり。」
 その時チトセは舞台袖で次に訪れる自分の出番を待っていた。
 今日歌う予定の曲は月陽のアリア。普段からこの劇場で通常公演で舞台に上がるチトセだったがここまで大掛かりなアリアは始めてだった。そう想い描いているうちに客席から拍手が起こり自分の出番を告げた。
『太陽の光は私には強すぎる』
 歌い始めると共にオーケストラが静かに演奏を始める。その時舞台に立っていた少女には16歳の彼女の面影は消え、淑女の表情になっていた
『儚い光りと闇に包まれた月に向けられる祈り』
 演出で劇場の照明は最低限にとどまっている。
『強い力と雄大な太陽にささげられる誓い』
 ここで照明が一気に明転する予定だったしかし
パリンパリンパリン!
その瞬間、劇場の窓のステンドガラスが突如音をたてて割れ始めたのだ、それに加えてまだ昼の時間だと言うにも関わらず、まるで割れた窓から闇が侵入してきたかと思わせるかのように、薄い闇が舞台を支配し始めた・・。
「いっ、一体何なのよ!きゃあっ!」
突如として舞台に立っていたチトセがその場に倒れる。気が付くと足首の所に赤い筋がついていた。

「クイック君!なんかチトセちゃんの様子がおかしいよ。」
突如異変が起こった会場。それに気づいたクイック達はすぐに舞台に向かった。しかしクイックは隣のプラムの様子がおかしい事に気づいた
「うん、あっ、あれ?プラムちゃん?」
「りゅ〜。空間がおかしいりゅ。」
「空間?」
「りゅ〜、別な世界につながっているって言うか・・あうぅ〜よくわからないりゅ・・」
舞台に向かう間にも客席の人間の何人かがチトセと同じように謎の攻撃に倒れる者が見て取れる。
「カミラさん!早く怪我人を外に」
「わかった!」
 クイックの指示で異変に気づいて中に日って来たカミラが動く。一方無事に舞台まで辿りついたクイック、プラム、ローラ、その舞台にはチトセの他にもう一人知った顔が合った。
「皆さん・・ここは危険ですよ。早く逃げた方が良いです。」
 そう舞台にいたのはリムとフォグだった。
「どういうことです?もしやこの騒ぎの原因は貴女なんじゃないんですか?」
「ううん、この事件が起こるのは知っていたけど私はそれを防ごうと思ったの。」
事件?リムは確かにこれを事故とは言わずに事件と言った。と言うことはこの騒ぎは誰かが意図的に起こした物なのだろうか?クイックはそう思った、リムはまだ話を続ける。
「この事件の犯人はエンフィールドに住む全ての人間。ここに住んでいた過去の人達の想いと記憶、これらが襲ってくるの、私はリム。人の夢を守る者。一人で人間の想いを守るはずだった者。手伝ってくれるならここに残ってください。『彼ら』が来ます」
「エ?えっ?闇が集まってく・・」
リムのその一言と共に劇場に入り込んだ闇が集まって、濃度をまし、人型を取っていくことがわかった。
そして人型を取った闇人の顔はチサトの方を向いた
「くっ、危ない!」
 とっさにチサトの前に身体を投げるクイック、その時クイックの中にはリムの言った通りなのか様々な思念が侵食してきた。
「あぁっあ、まともに奴らの牙を食らったら大変な事になるニャあ『ライト・エミュレーション』!」
「みんなプーに力を貸してりゅ!」
クイックが倒れると共にフォグの精神回復魔法とプラムの召還魔法の援助が飛んでくる。
「おいクイック!避難は完了した、ほらお前のだろ使え!」
そしてカミラがクロークに預けていたクイックの宝剣を差し出す。
「助かります!リム!こいつらに弱点は無いんですか?」
精神汚染から回復したクイックがリムにたずねる
「闇が一番濃いところ、ここが彼らのコア。」
 リムがそう答えると共にクイックとカミラが同時に闇人の一人に切りかかるそれと共に劇場全体の明度が元に戻っていく
「嬢ちゃん、神聖魔法使えるならそれも有効にゃ!」
「う、うんみんな頑張って!」
 フォグに促されたローラも支援を開始する
その時の舞台はまるで光と影がせめぎ合う舞のようにも見て取れた。
「記憶は土地に刻まれる物、でも自分から蘇ってはいけない物なのよ。」
そう言うとリムが最後に残った闇人のコアを杖で触れた
「bnishblast」
それと共に闇人は全員、空気の様に霧散した。


「さて。リムさん、どういうことか話してもらえるかな?」
 劇場での一件の後カミラはこの事件に付いて詳しく聞きたいと言い、青年団でアシュレイと共に話を聞こうとしたのだが、リムがそれを制止した。
「私は本来、人には見えないはずの者なんです
貴方達に私が見えるのが私は不思議なくらいです。」
その台詞の通り、リムを青年団に連れて行ってみても誰もリムの姿を見る事が出来ないばかりか団員から怪訝な目で見られるだけで終わってしまった。
「んで?うちにつれてきたの」
「ん〜久しぶりの大舞台終わった後だったからお腹空いちゃって。打ち上げも兼ねてきちゃった」
「まあ私は商売だから嬉しいけどね〜」
そんないきさつでチトセからのたっての希望でラビナの店、和泉飯店で食事でもしながらと言う事になったのだった。
 どうやらラビナにもリムの事は見えるらしい。
「昔々、この街は魔物や妖魔が総窟とする無法地帯でした。ここを聖女ラピスによって浄化した土地に立てられたのがこの街エンフィールドです。」
 口を開いたリム。エンフィールドが拓かれたこの聖女ラピスの話はエンフィールドに古くから伝えられている伝説で街の人間は大半が知っている。
「その時、この地に封印されていたはずの物が眠りからさめてしまいました。それは記憶を操る為の遺産、この遺産は元々は土地に刻まれている。全ての事象を保存しておく研究用の機材でした。」
「確かラピス様はこのエンフィールドになるこの土地を平和を望む想いで浄化したって話聞いた事ある。」
 リムの話にローラも思い当たる。リムの話に拠ると、ラピスの協力な想いの力が眠っていた記憶記録装置を再起動させてしまったと言う。
「その遺産を守る為に作られた機構が私、電子の妖精リム。でもある日、私は遺跡を発掘している冒険者に『発掘』されました。記憶装置の記憶を投影されただけの私は本来は他人には見えないはずなのに貴方達には見えていたのにはびっくりしてたんです。」
「りゅ〜?てことはリムは人間じゃないりゅ?」
はうっ!
注文していた料理を食べていたチサトだがなぜかそこでおびえながらリムを見上げる
「はい。私は造られし者です。記憶装置が完全に起動すれば私も目覚めるはずだったのですがその前に発掘されました。それで記憶装置への異常なプログラムを発見したんです」
「んで?今日の事件はどういうことなんですか?」
「はい、どうやら誰かが記憶装置の安置されている場所に侵入して悪用しているようなんです。記憶装置の場所は判らないようにされてしまったのでせめて被害を最小限に抑えようと思って・・」
うつむいた彼女からその話の真実味が伺い知れる。
「具体的にはどうなるんだ?」
「先のような闇人を生産することが出来ます。それを見た人達の恐怖でさらに協力な闇人が忌まれるでしょう。出来ればそうなる前に記憶装置の本体の場所を見つける必要が有るんです。」
「まったく唯でさえ誘拐事件やらが横行しているって言うのに今度は辻斬り魔か・・仕事が増えるな・・」
リムの台詞にカミラが肩をすくめる。しかしそこに3枚ほどの大皿を完食したフォグが口をはさむ
「それなら問題ないニャ〜たぶん同一人物にゃ。」
「どういうこと?」
「記憶装置を完全に起動させるには大量な思いや記憶のほかに感受性豊かな子供の生の記憶が必要にゃ。これはリムの本体が必要としてるニャ」
「つまり誰かが記憶装置のためだけにこんなに大掛かりな事したのか?それなら古代の遺産に詳しいマジックギルドと犯罪者を管轄する青年団に事情を話して・・・」
フォグの回答にクイックが一般論を唱えるがそれにチサトとプラムが反論する
「えっ、えっとリムちゃんが見えないんだったら証拠能力に欠けるから事後報告で良いと思うなぁ」
「あぅ〜そうだよぉ」
あくまで自分が首を突っ込みたい2人にとって周り(特に魔術師組合)が動くのは望ましくないのか思い切り反対する二人
「ともかく早いうちに本体の場所を見つけなくてはいけません。皆さんお手伝い願いますか?」
「そうですね。どうせお店はお休みだし構わないけど?(大嘘)」
「仕事の芽は速いうちに摘み取るに限る。」
「面白そうな事になってきたわ〜」
「あ、ありがとう御座います!」


フェイズⅢ<お役所仕事
ダン!
「だからワシに追わせてくれと言ってるだろうが!」
「あぁ〜、だからですね、ヴァルヴァドス君、誘拐事件の調査は私たちの仕事じゃないんですよ。はい水質調査。よろしくこちらの方でがんばっていただけるとありがたいんですけれどもねぇ・・・。」
「・・・わぁったよ。行きゃいいんだろ?行きゃあ?」
 所はエンフィールドの役場のショムニ課。一人の体格の良い巨漢が上司と思しき人物に抗議をしている最中だった。
 しかし黒縁眼鏡で鼻髭を生やした鹿にも気弱そうな課長を見ていて哀れに思えてきてヴァルは折れた。
彼、ヴァルヴァドス・グリューゲルン(通称ヴァル)。エンフィールド役所ショムニ課勤務の31歳、自称クールガイ。現在巷で流行中の誘拐事件を追うと宣言するも上から苦情が来ている模様だ
「判ってくれてありがとう。これ以上君が無茶をすると私の首が危ないんですよ。」
「ヌシの首はワシには関係ないことだが:?」
「切ない言葉ですねぇ・・・」


「まったく何故にワシがこんなことしてるんじゃい・・」
「それは役人さんだから・・・」
結局課長に押し切られる形でローズレイクに水質調査にやってきたヴァルが愚痴っているとそこにパルフェ・タムールがお約束の返し方をしてくる。しかしヴァルが聞きたい質問の意図は別に合った・・
「そうじゃなく何故に嬢ちゃんはワシの肩に乗っかってるんじゃ?」
水のサンプルを採取するために屈みこんだヴァルの肩にはなぜかパルフェがちょこんと乗っかっていた
「高いから。あっ、気にしないでお仕事続けて・・。」
「・・・・。」
肩にのられて気にしないでと言われても無理なような気もするのだがパルフェはそれを気にするでも無くのほほんと景色を眺めている。
するとそこに偶然通りがかった冒険者ギルドのリンネ・レッドフィールドとラキシュ・エンパイアが現れた。
「ヴァルさん?楽しそうですね・・・」
「わーい、ね、ね!私も乗って良い?」
「楽しいのかこれ?・・・ところで嬢ちゃん達今日はどうした?」
「えっと、私はこれからリヴェティス劇場に行こうと思ってたんですけどこの子に捕まっちゃって・・」
なんとなくラキシュの様子を見る限り、リンネの導入も今の自分と同じだったんだろうと勝手に想像してみるヴァル
「そうか・・・所でリンネ、ギルドの方で誘拐事件の情報は出てねえか?」
 と、そこでヴァルはギルド勤めのリンネに先から気になっていた誘拐事件の調査の足がかりを求めてみた。
「誘拐事件ですか?そうですね・・被害者の子供達は犯行当時、一人のときもあれば親御さんと一緒のときも合ったんですけど決まって一緒にいた人たちはみなさんその時の記憶が無くてその場でずっと時間がたってから気が付いたり、自宅で目がさめたりしているみたいです。」
「目撃者に記憶が無いから捜査も大変みたいだけどね。」
リンネの報告に結局肩に乗っかったままラキシュが口をはさむ。どうやら彼女も暇を持て余している一人らしい。
「そうか・・それにしてもここにも子供の姿は多いな・・。」
「そうですね、ここ何日か被害がありませんから。それに毎日家の中だけに子供を閉じ込めておくわけにも行きませんから。」
 するとそんな2人の尾枠を知ってかパルフェがノソノソと腕をヴァルの頭に乗せ割り込んでくる
「こうしてても始まらないし・・・こちらから仕掛けてみるとか・・」
「仕掛けるってもな。大体あちらさんはどっから出てくるも知れない。それにどんな奴かも判らない。危険なことはこの上ないぜ。」
 思ったよりも建設的なヴァルの答えにパルフェが控えめな胸を張って答える
「私がつかまってみるとか・・」
「いいなぁそれ、面白そう。」
 被害が出ている中、いささか不謹慎な台詞だったがラキシュの方もその考えを薦めてくる。
「でも被害状況を見る限り年齢制限があるみたいよ?」
「そうだぜ、被害者は年が行ってても14だからな、」
ヴァルはそう言うがぴょんと肩から飛び降りたパルフェは薄く微笑みながら自分を指差した。
「14歳・・ここに。」


「やっぱり囮捜査って言うのはどうかと思いますけど・・」
「お姉ちゃん、静かに、パルフェちゃん見失っちゃうよ」
 結局その後、意外にしぶとく引き下がらないパルフェを誰も止めることはできずに、どうせやるならと3人で後ろから見守ることになったのだ。
「とりあえずローズレイクで子供たちと戯れてもらえばどれかにヒットするだけで犯人に接触できるだろう。嬢ちゃんが助かってほしいってんなら見失わないようにすることだな。」
 そう言って後ろから移動するパルフェを追うヴァル。
そして事件は突如として起こった。
「ねぇ、あれ、あれ見て!何か変な人がきたよ」
ラキシュが子供たちが遊んでいるところに現れたのと言った先にはその場に存在していけないというわけではないが堂見ても不釣合いな黒尽くめの衣装に身を包んだ戦士風の男が現れて何かを口ずさんでいるように見えた。
「おい、すぐに出られるようにして置けよ。それと嬢ちゃん、」
 その様子をみてヴァルは後ろのラキシュに声をかける
「ん?何?」
「おまえはここで待ってろ。」
「ええっ?ここから面白いと思ったのに〜」
「リンネはともかく嬢ちゃんは自分の身を守ることを考えろ。それからみててワシ等に何かあったら誰か読んでくることだ良いな?」
かつてないヴァルの語勢にラキシュは思わずうなづく。しかし次の瞬間とんでもない光景が広がる。
黒衣の男が近づいていたのを気づいたパルフェは男のつぶやいたのに合わせて自分からも何言かをつぶやく、恐らく呪文の詠唱が始まったのだろう。その直後、男の手に瞬時に透明な刀身のバスタードソードが現れ、それを子供たちの方に向かって横に薙いだ。それを合図にしたかのように空間が二つに分かれ子供たちがその中に消えていく。
「!?行くぜリンネ!」
「は、はい!」
パルフェは男が動き出した瞬間にその斬られた空間の範囲から抜け出すことで無事に脱出出来ていた。
「テメェ!あいつらに何しやがった!」
一早くその場にたどり着いたヴァルがその勢いの反動に乗せて飛び蹴りを繰り出す。しかしそれをかるくスウェーでよける男にさらに背後にミドルキックが飛ぶ・・はずだった。しかしすでにその男の姿はそこにはなかった。
「ふん、雑兵が集まって良く言う。」
今まで子供が居たはずの場所に移動した男はそうはき捨てるとさらに呪文の詠唱を続ける。
「闇に・・染まれぇ!」
「なっ・・!なんだこいつらは!」
男の呪文の完成とともにその場に地面から沸いてくるように黒い人方の影が形を帯び、その場に居た街の住人に向かって飛びかかる。
「う、うわぁ〜!」
飛び掛った影はそのまま住人たちを纏わり付き取り込まれたものは頭を抑えて苦しみだす。
「ひどい・・子供たちをどうするんですか!」
 リンネは自分の愛用の槍を構えて男に問いただす。しかし、男の方はりん絵の問いにさも面倒な顔をして答えた。
「聞きたければその槍に聞いてみるんだな。」
スパイラルチャージ。
槍自身を錐のように回転させ、突進の推進力と共に叩き込む技術だが、男は軽く横に動くだけでそれを避けそのまま剣で槍を払う。
「ふん。この程度の実力で俺は止められん。」
「こっちを無視するな!」
「・・・」
 リンネの矛を避けたその地点にヴァルとパルフェが背後から左右に強襲する。特ヴァルの髪はその闘気で逆立って居る
 ヴァルの大上段に振りあがったハイキックとそれに呼応するようにパルフェが懐に入り込んで腹部にめがけルーンバレットを発射する。
バッ!
衝撃音と共に背後にふっとぶ男、
「ふっ、こんなものかと、聞いている。」
そこにはまったくの無傷で男が立っている、その姿はさっきの闇人を取り込んだかのように黒さがまして居るように見える。
「しかしさすがに面倒だな。よし・・」
そう言うと男はパルフェに向かい腕をかざす。それと共に腕から紫色の閃光がほとばしる
「だめ!くっ・・はあっ!」
それをとめるべくリンネが腕を払おうとするがそれをヴァルがとめる。
「待て!リンネそいつを攻撃すんな!」
「ディメンション・デュオ!」
 男が唱えた魔法は練金魔法の最高峰に位置する魔法、それは男の思惑とおりに効果を表す。
「えっ?」
キーン、バシッっ!
「きゃあっ・・!」
リンネが槍の柄を使い男の腕を払った時、すでに魔法は完成していた。それと共に槍が空間の壁にぶつかったように鋭い音を立てそれと共にパルフェが腕を抑え倒れる。
「遅かったか!あの呪文は空間をゆがめて、すべての悪意ある攻撃を対象に向けさせるんだ。奴に攻撃するとパルフェが苦しむぜ、くそっ!」
「!それじゃあ、打つ手ないじゃないですか!」
「そうなるな・・」
すべての攻撃がまったく無駄になることを知った2人は愕然と肩を落とす
「ふん下らん茶番だな。さて・・そろそろ終わらせてもらうか・・」
「そこまでにしてもらおう。」
「アシュレイ殿のお出ましか・・」
 するとそこにラキシュと共に鮎例の水方が現れた。
「エンフィールドのすべての子供は私が守るべき子供だ。手を引いてもらおうか。」
それと共にパルフェに手をかざしゆがめられていた空間が元に戻る。
「下らんな。俺は俺の信じる道を行く。それが俺の生き様だ」
「ならば互いの信じるもののために文句は言えんな。貴殿の名は?」
二人は対峙したまま目を離さない。もはやPCの入る余地がない・・
「スレイブだ、スレイブ・ルイズシーク・・あんたのような英雄に名を覚えてもらえるとは光栄だな」
なにやら悠久2ndで聞いたような2人のやり取り・・
「しかし今日やるべきことは終わった。帰らせてもらう・・アシュレイ、あとそこの雑魚どもも信じるもののためと言うなら、又会うこともあるやもな、さらばだ。」
「ま、待ちやがれ!」
「ヴァルヴァドス君やめるんだ!」
「くっ・・」
敵わぬとわかっているからこそ、その場の全員が何も言おうとはしなかった。


「何だと!それじゃ、あそこに居た被害者全員が何も覚えて居ないって言うのか!」
「うん・・。外傷ほぼないけどみながみな子供が居ないって泣いてた。」
 その後アシュレイに事情聴取と言うことでヴァルとリンネが青年団に同行する、パルフェはスレイブが召還した闇人の治療を教会でおわらせてきたパルフェがその様態を報告する
「やはりそうなのか・・症状と言い誘拐事件の犯人はまず彼と思って間違いないか・・」
「失礼します」
「おうリンネか、どうしたんだ?」
「そのスレイブさんの事なんですけどギルドに登録されて居ないモグリの冒険者みたいです。とりあえず私は知りませんでしたが観光協会の方に顔を出したことがあったみたいです。何か色々と準備があったみたいで。」
 次々と集まっていく情報だがすべてにおいて決定打に欠ける。とりあえずアシュレイがねぎらいの言葉をかける。
「あとは、私たちが何とかしよう、とりあえずこの書類に飛鳥事項を記入してくれないかね?事件の参考にさせてもらうよ。」
「それならワシに任せな、始末書で書きなれているからな。それよりこの事件だったら足を引く気は早々ないぜ。ワシだってエンフィールドの役人だしな。」
 とりあえず素直に笑えない事実・・
「判っただが無理はしないようにな?・・」


フェイズⅣ<
「なぁ、本当に良いのか?あとでラキシュに何言われるか・・」
「良いんだよぉ〜ラキちゃんだって今日はクイックさんとデートだもん!キルシュもお兄ちゃんとデートなの!」
 と、今日はついぞこんな状態のカッセル。
「デートと言うよりは幼稚園の遠足に引率して居る保父さんのような感じだったんだがな・・」
 とりあえず朝、ずるずるとラキシュ、ローラ、プラムに引きづられるようにして出行ったクイックを目撃していた・・。
「そんなのはどうでも良いよう!とにかくデートが良いの!」
まるで妹のやきもちに付き合っているかのような感覚に陥る。
「んで?まぁ、それは良いとして、どこに行くんだ?」
しかしそんな考えもローラが同じ事をしてくるので宿命かななどと半ば諦めムードで思ってみたカッセル
「今日はお小遣いもないし、内輪も良いかな?と思って」
「そうか、じゃあ美術館に行くのか。」
 そう言ってすでに諦めたのかカッセルの方から腕を掛ける
「デート、デート〜お兄ちゃんとデート〜(ドべしっ!)あうぅ〜。」
カッセルの腕を引いたまま何かに躓き、転ぶキルシュ。しかし、よほどうれしいのかすぐに笑顔で立ち上がった。受付の方にもすでに言ってあるらしくキルシュを見ると何も言わずに通してくれたがなぜかカッセルの方に何か哀れみを含んだ意味深な目線を投げかけてきてはいたが・・


「これはかなり南にある要塞都市ジンの外壁の絵だな。どの絵も良く掛けてるな。」
 カッセルにはとりあえず絵を描く趣味はなかったが、トレジャーハンターとしての職業柄、絵画や宝物に付いてもかなり知識がある。
「さすが、お兄ちゃん!ねぇ、じゃあ、あれはどこの絵かな?あの絵、エンフィールドの人が描いたんだけどここにこんな風景ないよね?」
 キルシュが指差した先には不思議な感じを受ける。美術館に収められる絵や作品はその出来栄えから魔力が込められている場合もあったりするのだがそれとはまた違った印象を受ける。
「何かの塔だな・・。山と湖・・ローズレイクと雷鳴山みたいな絵だが街がないところをみると開拓前なんだろう?」
 しかしその塔の絵画の年代をみるとエンフィールドが開かれた後とされている。もちろん描かれた時代がそう示しても何の目安にもならないが・・
「この絵、蜃気楼の塔って言うんだって。でも蜃気楼って砂漠とかで起こるんだよね?」
「いや、確かにそれもあるが似たような現象なら水のあるところだったら起こる可能性もある、例えば・・それこそローズレイクとかな。」
 とりあえずラキシュに請け答えるカッセルだったが目線はその絵から離せないで居る
「そうなんだ?じゃあ本当にローズレイクにあるのかな?」
「さぁな、ローズレイクは他の地域にも続く大きな湖だから全部を確認した訳じゃないしな、俺が見た中にはなかったけどな。」
「うん何か不思議にひきつけられるよね?」
「ん、あ、あぁ・・」
 ラキシュにそう言ったカッセルだったが、本当は多少だったが見覚えがあった・・


「ねぇ、お兄ちゃん!」
「どうした?お替りでもするか?良いぞ?」
 その後二人は、0話でお預けとなったティータイムを楽しんでいた
「わーい、真琴さ〜ん!パフェおかわり〜ってそうじゃないよぉ」
 どうやら行きつけらしい喫茶ロンドにてそう言いつつ、おかわりを注文するキルシュ。しかし今日のデート?がよほど、お気に召したのか、そのままカッセルにダイレクトな質問を投げかける
「んでどうしたんだ・・?」
「お兄ちゃんは私とラキちゃん、どっちが好きなのかって。」
「八っ?どっちって?」
「あっ、そうかぁ、ラキちゃんだけじゃなくてローラちゃんも入れなきゃ駄目だよね。」
「いや、そうではなく・・・」
 喫茶ロンドになにやら雲行きが怪しくなってくる卓が・・
「でもね、カッセルお兄ちゃんにはちゃんとお料理ができて家事もこなせる女の子が良いと思うの!」
「トレジャーハンターにはいらない要素なきがする・・家がないし・・」
「でも、ラキちゃんもローラちゃんもお料理とかすっごいの作っちゃうし・・ここはやっぱり私がぁ・・」
 すでにトランスした様な目で一方的に話しつづけるキルシュを横目に危険信号がピコピコと鳴り響き、次の瞬間ピッコリと測定不能を示したときだった。
「あああああああっ〜!」
「いきなりどうしたんだ!?」
「ぶたさぁ〜ん!」
「ぶ、豚?」
 突如として奇声を上げるキルシュに何事?と思い、その視線の先を追う、すると家族連れの子供の手に握られたピンクで丸い風船に手と足と尻尾をつけたような形容しがたき風船があった。
タタタタっ
「ねぇねぇ!その風船、どこで貰ったのかなぁ?」
「り、リヴェティス劇場だよ・・・。」
 目をぎらぎら輝かせ問い掛けるキルシュをとめる事はできずに呼びこめられた子供も引きながらも答えていた。
「カッセルお兄ちゃん!悪いけどまた今度ぉ〜!まったく!ラキちゃんが急に劇場に行くなんていうなんて怪しいと思ったよぉ!」
「あっ、そうですか・・行ってらっしゃい・・・。」
あとに残されたカッセルには、ただ見送るしかできなかったと言う・・・

フェイズⅤ<トランスガール
「よう、ラビナ、図書館にでも行くのか?」
カッセルが喫茶ロンドでキルシュと別れてから図書館前で泉飯店のラビナに出会った
「あっ、カッセルさんだ。一応これでも学生が本職だからね。何か今日はミリュウも居るみたいだし。」
「ミリュウも居るのか?ちょっとよってみるか・・?」

「み〜りゅうっ!お疲れさま!」
「あっ、ラビナ、それにカッセルさん。お疲れ様です」
「何を調べてるんだ?」
ラビナが案内した王立図書館には閲覧席の一角を大量の資料で占拠していた。
「色々気になるようなことがありましたから。たとえばラビナが教えてくれた、最近はやり闇人とか謎の塔の話しとか。」
「塔?それって蜃気楼の塔の事か?」
「蜃気楼の塔?その塔かはわからないけど、どうやらその塔に闇人を製造する術があるみたいなんです。リムさんが言ってました。そして手伝ってほしいとも」
「そうか・・これがその塔とやらの資料か?ちょっとみるぞ?」
 そう断わってミリュウの隣に積んである資料のひとつに目を向ける、するとそのうちの一ペーでジその手が止まった
「このイラスト・・・さっきの・・絵だよな・・?」
 本自体はその塔に付いて述べたものだったがそのページはカッセルが謎の繭を発見したあの記憶喪失で帰ってきたあの遺跡について描かれていた。
「さっきの絵?あっ!これってフェニックス美術館にある絵だよね?」
「ラビナも知っているのか?この絵について。」
「えっ?ううん。ただきれいだなって。」
カッセルが手を止めたのをみてラビナが本を覗き込む
彼女もどうやら美術館の絵は知って居るらしい
「そうか?この前の行き倒れた遺跡に付いての記述の所にこの挿絵があったからちょっと不思議に思っただけなんだが」
「ただそれに付いては古代語で描いてあるから辞書とかで調べないといけないんです。」
 気になっているカッセルに目を留めたのかミリュウがそれに付け加える
「ああ、そのようだな、しかも公的な文章に使われる上位古代語のようだ・・この表現だと読めないか・・まぁマジックギルドの連中なら邯鄲居読んじまうかもしれないな。これって貸し出し可能か?」
「いえ、閲覧可能ですが非禁出の本です。」
「じゃああいつに頼んで借りてくるか・・」
 ちょっとこの本の内容が気になったカッセルはここに知り合いでも居るのか貸し出しカウンターの方に行こうと腰を挙げた瞬間・・
「カッセルさん・・駄目です!」
「八っ?みりゅうちゃん?」
 カッセルの腕をがっしとワシ掴みにしてうつむいて静止させるミリュウ
「これは・・非禁出の本なんです。それはこの本に学術的な価値があるものだからです。それを人とのコネだけで借りようなんて言語道断、許される行為ではありません!」
「いや・・ちょっと借りるだけで何もそこまで・・」
「いえ!ちょっとだろうがなんだろうが例が甥を認めるわけには行きません。人は前例と言う所業のせいで数々の過ちを犯してきました。カッセルさんにそのような罪を犯してほしくありません!」
すでに飛んだ状態で力説するミリュウ。それにカッセルは助けを求めるような目線でラビナを見つめる
「あっ、みりゅうがその状態に入ったら1時間ぐらい誤りつづけないと許して貰えないからがんばってね。さてとっ、わたし宿題やってきま〜す!」
「カッセルさん!ちゃんと聞いてるんですか?しっかり聞いてくれないと私怒りますよ!」
「もう怒ってるじゃないか・・・」
「なんか言いました?」
「いいえ・・。続けてください。」


「リンネと言ったか・・。ここに書いてあるものをそろえるための施設を教えろ。」
「あなたは!良くのこのこ出てこれましたね!」
「一応同業者、ようは客だ。」
青年団を呼びますよ」
「罪状は何だ・?証拠がないだろう?アシュレイとか言う騎士は確かに邪魔だが私を阻む事はできない。案内する気がないなら失礼する。」
END

例えばこんなアクション
○ まだまだ知らないことを調べに行く。
○ あの人と一緒
○ 闇人を止める方法を探す(誘拐事件)
○ 繭の遺跡に行ってみる
○ 蜃気楼の塔に付いて(難易度高)
○ スレイブをとめに行く、(難易度高)
追加NPC紹介
スレイン・ルイズシーク
エンフィールドを襲った張本人、黒いよろいと黒き県を携えた青年。

追加PC紹介
チトセ・ローゼンベルギア
学校に通うためにリヴェティス劇場の通常公園などでバイトをしている少女。一応お坊ちゃまなどが通うらしいエンフィールド学園では珍しい方?
外見的にはGGXXのブリジット君

ヴァルヴァドス・グリューゲルン
エンフィールドの役所のショムニ課に勤務する31歳、ガタイが良く特に足を使った戦闘技術は相当なもの性格はこんなだけど数学や文学系の知識もあり、趣味は雑用らしい(笑)。


マスターより
 さむくなってきました体調を崩してはいませんか?
今回は体調不良その他で執筆が送れてしまい申し訳ありません。が竹までに間に合わせるため締
切の方が多少厳しくなっていますご了承くださいな
 さて序章を読み返して見て致命的な個所を発見・・誤字脱字なら目をつぶる所ですけど(本当はいけないね(笑))ラキシュでちゃんとキルシュちゃんの性格が逆という指摘を受けまして今回はなおしたはずです・・・こういう間違いは早めにお願いしますね。助かりますから。
 今回は前作のシーカーズエデンと違ってストーリーは最初からほぼ一本ですけどやる事はそれなりにあると思います。キャラクターの立場や性格を考えてアクションを考えて見てくださいね。

えっと次回のアクション補足なんですが次回は
 スレイブをとめる関係のアクションはかなりの実力や戦略がない場合は重症を負う場合があります。
 蜃気楼〜は抵抗力、クラフト、交渉が推奨技能です
 繭の遺跡にはカッセルが行く事になりますから彼目当ての人はそっち方面で(笑)

次回のアクション締め切りは12月11日です