悠久幻想曲≒0第3話「開かれない扉」

水が地に集まるは水の理、
炎が空に昇るは炎の理
それは人が定めし意味のない常識
人の思いで覆る簡単な法則。
動き出した塔の力で湖をわたり、燃え上がらぬ炎を放つ


第3話
「開かれない扉」

第一楽章<過去の痛み
 これで何度目になるだろうか。
 アカデミーの講師控え室群が写し鏡の迷宮へと変えられた日から翌日、幸運にもその場を離れていた講師は何人か居たが、この状態で講義が続けられるはずもなく、アカデミーの威信をかけ、犯人の捕獲と講師たちの救出にあたっていた。
 しかしスレイブは蜃気楼の塔に帰り、救出隊の方も今朝から何回か出口に舞い戻ってきている。
「中の様子はどうなんだ?」
「はっ、中は鏡が張り巡らせたような空間で空間変化の罠が大量にあり、最奥にたどり着く事はおろか地図を作成することも出来ません!さらに中には自分の心を映し出す術が掛けられており自我を失うものも出ています!」
「そんな…パパ!」
アカデミーの報告を聞いたローラが落胆しているときにチトセ・ローゼンベルグが彼女を慰めた・・
「大丈夫みんながキット助け出してくれるから。私も行ってくるよ」
そう言って彼女は自ら記憶の迷宮へと足を踏み入れた。

ダン!
「何でわっかんねぇんだよっ!実際に被害者が出ているだろうが!」
「それでもですね。ヴァル君・・これはそれこそ私達の仕事じゃないんですよ?アカデミーの事はアカデミーに任せておけば良いじゃないですか?」
 所変わって外が騒々しい役所のショムニ課。ヴァルヴァドスが課長に向かって直談判をするも受けられるはずも無く雑用を押し付けられていた。
「ヴァルヴァドスさん、まだですか?早く行きますよ」
表では装備を固めたリンネとパルフェが外に魔っていた
「おう!もう許可とらなくても行ってやるぜ。」
「後で始末書書かされますよ?」
 この三人は打倒スレイブで徒党を組みアカデミーへと乗り込もうとしている真っ最中だった
「しらねぇな。始末書なんか10秒あれば書ける!」
 ちなみに彼の始末書の最高記録は5分で100枚だったりする・・そもそもそんな枚数を溜め込んでおくななんていう話は置いておいて、ともかく上司の制止を無視してアカデミーへと向かう一行だった

「何!スレイブはいないだと?ちっ!遅れたか・・」
アカデミーに到着した3人。しかし、そこではローラとチトセがアシュレイを助けるために迷宮の中へと入ってしまったとの報告を受ける。そして当初の目的のスレイブもその場にはもちろん居ないのだったガ・・
「ううん・・中に居るわ。」
「何でいわねぇんだよ嬢ちゃん。」
 パルフェの一言でヴァルヴァドスが活気付く
「聞かなかったし・・チトセおねえちゃんも向かったみたい」
「えっ?一般人を中に入れたんですか?」
「は、はぁ、一瞬の隙を突かれたといいましょうか」
 リンネがとっさに入り口の警備をあたっていた騎士に叱責する。
「ともかくそんなことを言っている暇は無いですね・・・とにかく私達も早く中へと向かいましょう」


フフフ・・・
「だれ?!」
私?私は貴女よ・・・。
「えっ?私?」
 記憶の迷宮をさまよっていたチトセ。ローラの手を引きながら歩いていたはずなのだがその姿は見えなかった・・チトセは一人で歩いていた。
そんなチトセに鏡張りの空間がゆがみ、ひとつの影が現れる。
今は忘れているかもしれないけど昔貴女だったものよ・・
「そんな・・・忘れてなんか・・・無いわよ」
チトセの目の前に現れた女性・・それは本人が言うように昔のチトセだった・・・
良かった。私は死んでしまったのにそれで忘れられてしまったら悲しいもの
「私は私よ!確かにシエルは事故で死んだ。回りもそう思って居る・・・。でも私は現にこうしてチトセちゃんの体を貰って生きて居る」
 チトセは実は既に一回死んだ身だった。それまでは目の前の女性、シエルと言う名前だった、それが同時刻にやはり命を落としたチトセと言う少女の体に引かれて生き長らえていた。
「あのあと、病院で目を覚まして、まったく別な体で・・病院の人には奇跡だとかもてはやされたけど、友達も家族も、みんな私の事なんて知らないと言った。シエラは大人だけどそれでも弱いところがあるのよ!歌い手としてそれまでに得た名声、ファンの人もシエラの訃報にかなしんでそれを私はただ見て居た・・・」
知っているわ、私も悲しかった・・でも貴方は現に生きている、苦しみながら。会いたかったんでしょ?私に。ここに居ればいつまでも私は存在する事が出来るわ、記憶装置が私を記憶する限り・・・
現れた時と打って変わってやさしい口調になってシエルは答えた。チトセはなきながらシエルの伸ばした手を取ろうとしたのだが・・・

「いやゃああああぁぁっ!」
「えっ?!ろ、ローラちゃん!?」
 突如あがったローラの悲鳴が聞こえた瞬間シエラはきえ、チトセはわれを取り戻した
「ローラちゃん!ローラちゃん!しっかりするのよ!」
「!?・・・チトセちゃん・・・?」
「そう、私、判る?どうやらこの迷宮にいっぱい食わされて居たみたい・・」
『ここには古今東西のあらゆる記憶が集約されて居る。』
前回スレイブから聞いた言葉を思い出しながらチトセがつぶやいた。
「それでアカデミーの人達は出てこられなかったのね・・・」
「うん。ローラちゃん、早く行こう!このままだとアシュレイおじさんも同じような事になって居るわ」

そのころアシュレイはやはりチトセの言うように過去の記憶にとらわれていた。
「ローラ。熱の方はもう、いいのか?」
うん、ちょっとまだ頭がぼう〜っとするけど大丈夫。
「そうか。それは良かった。それじゃ、もう少し寝て居なさい。元気になったら遊びに行こう。」
えっ!本当!?判った!約束だよ!

「人間は感情なんて物があるから過ちを繰り返すのだ。人類もそして私もな」
 時を同じくしてスレイブも実は迷宮の中に居た。しかし彼は他の侵入者と違い迷宮の雑念を極力避け、ある記憶を探していた・・・
「これだ・・・この記憶・・記憶装置を作り上げた魔導師の物だ・・・」
スレイブが探していたのはそう、今まで開くことはあなかった蜃気楼の塔の最上階の扉を開く術に付いて調べるためだ。膨大な記憶の流れに流されないように必要な情報だけを取り出す。
「リム・・・それが鍵なのか・・・.」
 リムの事を知らないスレイブはさらにリムに付いて記憶を調べ始めた・・・

それからしばらくの後、ローラは快方に向かい安心に思えた・・・しかし
「完治はしないのですか?」
ええ・・・。今まで先天性の物ですが潜伏していたのでしょう。この病は体の抵抗力を奪う物です。抵抗力の無い体は外界の影響を受けやすく放置すればお嬢さんはあと5年も生きられないでしょう・・・
ローラの体を診た医者はそう告げた。どうやら今の医学では解決しない物らしい。
「本当に直らないんですか?」
・・・残念ながら・・。出来る事は出来るだけ症状を抑える事ぐらいです・・・
ばさっ・・・
「ン?・・・・・!?ローラ!おまえ、もしや今の話聞いていたのか・・?」
嘘・・・嘘だよね・・?私死んじゃうの?そんなのいやだよぉ・・いやゃああああぁぁっ!

「なるほど・・あの少女が扉を開く鍵と言うわけか・・ン・・?」
 リムの詳細に着いての情報を得て居たスレイブ。市かしそこに新しい記憶が入ってくる。
それは動き出した記憶装置によって集められた、アカデミーの混乱の光景だった。
「邪魔者が5人か・・・ここに向かってきて居るな。」
 そしてローラとチトセ、そしてやはりここに潜入しているリンネたちの見ているかこの記憶までもつぶさに見て取る事が出来た・・
「邪魔者・・といっては失礼だな。あの少女の居場所を辿るまではまだ使い道がある連中だ・・。」

「やはりきたか・・・・」
「おうよ!いつか決着はつけないと行けねぇからな、人の記憶をもてあそびやがって!」
「私の肌に傷をつけたその罪は万死に値する。そしてやり口も・・」
「貴女は冒険者の風上にも置けない人です。冒険者ギルドの名において貴方を処罰します」
 スレイブの元へとたどり着いた3人はそれぞれの思いを胸に対峙するように向かい合った。
「アシュレイおじさんを・・いえ、この空間を開放しなさい!」
「パパっ!」
「おう嬢ちゃん達もきたか!こりゃ探す手間が無くて助かる。」
4人が対峙しているところにさらにチトセとローラが現れる。
「いやだと言ったらどうする?」
「消えてもらう。」
そのパルフェの一声で一気に戦闘が加速した。
ウンディーネティアズ。」
「アブソリュート・ゼロ!」
「余所見ばっかしてると怪我するぜ」
 パルフェの補助魔法をその遥か4倍(当社比)の呪文で打ち消すスレイブ。さらにヴァルの打撃も剣の動きを多少加え打ち消していく。しかしそんなスレイブの態度にリンネが疑問を浮かべる。
「どういうつもりですか?」
「何がだ?」
「貴方の性格から考えてこんな戦い方はしないでしょう?」
「良く判って居る。賢い奴は嫌いじゃない。」
「でも、自分の考えにそぐわなけりゃ切り捨てるんだろ?」
「そうだな、おまえ達には聞きたい事がある。答えろ、リムと言う少女はどこに居る?」
 ヴァルの問いを、さもつまらなさそうに受け流すスレイブ。しかしもちろんこの中にそんな人間は居ない。
「知ってるけど教えない。」
「貴方のためにどれだけの人が犠牲になったか判りませんけどその人たちのために生かして返すわけには行きませんね。答えは否です。」
問答無用でスレイブに向かっていくリンネ。しかし向かっていくまえに仲間に耳打ちをする
「誰かスピードの援護を。」
「何か策があるんだな。オレも協力するぜ。」
「あうぅ〜戦闘じゃやっぱり役に立たないわ〜」

「てやあああっ!はっ!ぜいっ!」
「遅いな・・」
「遅いのは貴様の方だぜ!食らいやがれ!」
「大丈夫。痛くしませんから・・・・・・・・・・・・・まだ。」
 リンネの分散連激にパターン的によけていくスレイブに移動を阻まれ、そこにヴァルのミドルキック、パルフェの掌呈突きが入り一瞬だけスレイブの体制が崩れる。
「今です!ローラちゃん!」
「う、うん。シルフィード・フェザー!」
 ローラの呪文により風の精霊がリンネとそしてパルフェを包み込み、体を軽くするそしてさらに
「ファイナル・ストライク・・・・はああああっ」
 本来戦闘力を格段に上昇させるファイナルストライクを瞬発力に変え極限まですばやくしたリンネ。人外と言うにはまだ及ばない速さだったがそれでも体制を崩した状態でのスレイブには回避のしようが無い。
バルサンお願い。」
「誰がバルサンじゃヴァルじゃ!」
「日本語には「う」に濁点つかないのに・・・」
「んでなんじゃい?」
 一方こちらもヴァルヴァドスに地下より耳打ちするパルフェ
「四番、パルフェ・タムール。いっきまーす」
 そのかけ声と共にヴァルがパルフェの足を両脇に挟みジャイアントスイングでぐるぐると回転を始める。
因みにスカートを穿いているパルフェだが直前にこっそりと唱えたウンディーネ・ティアズの加護でヴァルの視界は遮られている。
「信用されてないんだな俺は・・・。」
 ヴァルがちょっぴりセンチになっている所で、パルフェがゴーサインを出すと共にちょっと向こうに行っててねと山本さんを放り投げる
「にんげんがお空を飛びます。」
 それを合図に遠心力&魔法の力で高速化された弾頭はスレイブに直撃を見舞う。
「山本さん・・・。」
 本来ならばこのダブルヒットで終了の筈だった。しかしスレイブの受難はさらに続いていた。
「ぐげぇ!」
  敵役とは思えない情けない声を出して地に伏したスレイブに乗っかってきたのは放り投げたはずの山本さんが巨大化して襲いかかるというちょち異様な光景だった。
「貴方には魔法王国期の遺産を扱うには100年早いです。」
 その言葉と共にリンネの手にはスレイブのもって居た黒き剣が収まって居た
「やあい。剣取られてやんの。」
 ボソッと堪えるパルフェの一言。
「早くこの空間を解きなさいよ!」
「そうだ!パパは?」
 チトセとローラもさらに崩れ落ちたスレイブに近寄る。
「ほんっとうに不覚をとってしまったな。まあ良いだろうこの空間は元に戻してやろう。私の体に傷をつけられたのは久々のことだ・・」
「実はナル・・・」
「うるさいっ!シナリオ半ばで殺されたいんか!」
 パルフェの一言にシステムの事を持ってきて必死に弁解するスレイブ
「ま、まあね。じゃあ早く解いちゃってよ。」
「ふ、まぁ良いだろう、だがアシュレイが戻りたいと言うだろうかな?」
「ど、どういう事?」
期になる言葉を放って、スレイブはどこからか淡く輝く結晶を取り出してしみじみとつぶやく。
「どうやらこの記憶装置が作られた時代。記憶を宝石のように売り買いしていたようだな。・・・約束どおり結界は解いた。ではまた近いうちに会おう・・・」
「えっ・・?それってあっ・・・」
 ローラがスレイブに問いただそうとしたときは既にスレイブの姿はかき消えていた。

第二楽章>戻らない時
「そうですか・・・ありがとうございました・・・」
 スレイブが去ってここはニューフィールド邸、救出された講師達はそれぞれの自宅へと戻ったがその誰もが目は虚ろで言葉も片言しか発しない状態に陥っていた・・。それはアシュレイも同じだった
「しかしアシュレイ殿の症状が一番重いな。」
 アシュレイ救出の一報を受けて即座にニューフィールド邸にやってきたのが彼を支持するカミラだ。他にも司祭の共として一緒にミリュウも来ていてついさっきまでアシュレイを治療していた司祭を見送ったところだった。
 カミラはアシュレイの症状を見るなり魔術師組合、聖・ウィンザー教会、クレスト医院ありとあらゆる治療手段を手配したが効果が上がらなかった。
「パパ、私だよローラよ。忘れちゃったの?」
「ロ、―、ラ?」
「そうですね・・・神の奇跡も通用しませんでした。」
「いったいどうなされたというんだ。」
「それなんですけどパルフェちゃんから聞いた話によるとスレイブは消えるときに何か結晶のような物を持って居たと言っていました」
アカデミーから帰ってきたパルフェからその時の状況を聞いていたミリュウはそこから何かを模索する
「そして魔法王国期には記憶を売り買いしていたともな・・・考えるところは一つだが・・そうなるとどうしても大掛かりな事になってしまう。」
「ハイ。教会のの審問委員会もこのスレイブの行動に疑問を抱き始めました」
 聖ウィンザー教会はこの時代、国からの後ろ盾のためかなりの力を持っていた。 もちろん異端審問委員会と言っても辺境の街の神官の集まり(様はミリュウの自己満足な呼び名)だった。
「まぁ、それはさておきとして、大勢の人間が動くのは良くないな」。人間大なり小なり感情に左右される。その感情を吸って記憶装置は更なる力を得る事になる・・出来れば少数精鋭で何とかしないといけない。」
 カミラはそう言うがミリュウの情報のとおり街はその思惑とは逆の方向に動き始めていた。
「ねぇねぇ・・カミラお兄ちゃん、」
「どうかしたのかローラちゃん?」
「あのスレイブって奴がもっていた黒い剣ってどうしたの?」
「あぁ、あれかリンネがあのあとマジックアイテムの処理は専門家に任せた方が良いって言ってクイックに預けようとしたんだけど例によって街じゅうを探しても見つからないでいるみたいだが?」

 そしてそのとき当事者の街にいない人は現在蜃気楼の塔にいた。
「今ならスレイブがいないはずですから塔に侵入出来るはずです。」
その場にはリムとクイック、プラムにカッセルの姿もあった。
「なぁ、クイック、おまえなんか俺に言うことがあるだろう?」
もちろんカッセルが言っているのは前回のはた迷惑なマジックアイテムの話だ。しかしクイックの方もさらりと笑顔で返しでくる
「えっと。僕の用意していた『銀の糸』が無ければカッセルさん達は闇人達の餌食になってしまっていたからそれについてお礼をしてくれるって言う話ですよね?」
「りゅ?おいしいご飯?」
「そうだよプラムちゃん。このカッセルおじさんがお礼にご馳走してくれるんだよ。」
「この確信犯め〜」
「デモ僕の言ったとおりの効果が現れたはずですよ。確認はしませんでしたけど」
「おまえ本当に役所から営業許可貰ってんのかよ?」
「ええ、ショムニ課のヴァルさんに貰いましたよ」
「管轄違うじゃねぇかよ・・・」
 昼間の日差しにちょっぴりダウン気味なプラムだがご馳走と言う言葉に反応する。しかしその表情は何やら眠そうだ
「所でぷーちゃん寝不足なのかな?」
さっきからそれが期になっていたのかクイックがたずねる。するとなぜかリムが言葉をつぐんだ・・
「ええっと・・」
「昨日はリムが寝かせてくれなかったりゅ〜・・・」
「えっ・・・それってどう言う」
 男二人にあらぬ妄想が広がる・・・
「夢の力を分けてもらいました。それで夢の中でいっぱい遊んだんだよね!」
 しかしやはりそんな妄想が現実に起こるなんて子とは少なく 、そんなオチが待ち構えている物なのである。
 しかしそこでうつむいてしまうリムもリムで誤解を招いているのだが・・・
「りゅ!遊んだ〜!今日も遊ぶ〜」
「・・・クイック・・男って悲しいよな・」
「・・・・た、多分カッセルさんだけです(多聞に嘘)」
「とりあえずそれはわかりましたから、えっと・・クイックさんとプラムちゃんは別の方から入ってください。」
「そうだなプラムはクイックがお気に入りだしこの前クイックンとお風呂入る〜とか言ってたしな。」
 先ほどの振った言葉を流されたのがよほど悔しかったのか皮肉のこもった言葉を投げかけるカッセル
「そんな根の葉も無い事言わなくてもいいじゃないですか大人気ない。」
「ク一君とお風呂〜入りゅ〜」
「えっ?」
 なぜか両手で自らの肩を抱いてちょっぴり身悶えてそう答えるプラムに一瞬その場の時が止まる・・
「プラム・・?」
「11歳は食べごろりゅ〜(意味不明)」
とまっていた時がさらに凍りつく
「冗談りゅ〜」
「・・・・食べごろっておい・・・」
そして時は動き出す
「プラムってさ、年相応以下に子供だけどさ年相応以上に残酷な一撃をくれるよな・・」
「ええ・・・」

「うわ、強引に壊されているあとばかりですね。」
 そんな壊れたプラムのやり取りの後一行は2人筒に別れて出発した。1組は青の円水晶を持っているリムとカッセル、そしてもう一組は強い魔法力と鑑定眼で調査すると言うことでプラムとクイックだ。
「りゅ〜強い魔力だおぅ。強引にたたきこんでりゅ」
 一応魔法力はトップクラスのプラムがその痕跡を判断する。
「一応この塔の鍵となる青の円水晶はカッセルさん達がもって先行してますから僕達はゆっくり調べながら行こうね。」
「りゅ!」

 長く続く蜃気楼の塔その内部はある種進みやすい構造だった、と言うのもほぼ全てのフロアが同じ作りになっていたからだ何階かは全ての扉が破壊されていたがそのうち階段のある位置まで一直線に道が出来ていた。
「でも最初の階でも開いてない扉はあったしなやっぱり誰かシーフか誰かを連れてきた方が良かったんでしょうか・・・」
 それぞれの扉を調べていくクイックがそうつぶやいたそのときカッセルのそでをプラムが引っ張った。
「こら澪、袖が伸びるだろう?」
 なぜか謎の失語症の少女の名前を口にするクイック。その台詞にちょっと呆れ顔でプラムが答える。
「りゅ、ぷ〜は澪じゃないもん。クーちゃん、誰か居るよぉ。」
「誰か居る?確かに何か音が鳴りますね・・・こんなこともあろうかとこれを用意してきたんだな。」
 そう言って取り出したのは前回の繭の遺跡でカッセルたちに渡した生物探知の警鐘だった。しかし前回の違う点として何やらウインドウっぽいものが取り付けてあった。
「えい、ぽちっと!うーん何々?隠れているのは女の子ですね。年は16歳、かなりのお嬢様、住所はエンフィールドのウェストロットのリヴェティス通りの1−1・・・」
 なにやら表示されていく内容を次々と読み上げるクイック、しかしそんな事まで判るのだろうか・・・
とにかくクイックの読み上げる内容を察知してプラムがその隠れている方向へと走りよる
「わーい、ラキラキ見っけ!」
「うわぁ!プラムちゃんだぁ!どうしたのよこんな所で?ってクイックお兄ちゃん?さてはお兄ちゃんがあまりにプラムちゃんを可愛がるあまりこんな所で監禁!」
プラムに発見されたラキシュ。彼女は単独この塔に面白そうだからと調査に来ていた。しかし、見つかった時の一言がどうやらクイックを怒らせたらしい
「ほう・・ラキシュ・エンパイア彼氏いない暦16年、その性格から友達は多いがやはりその性格から友達どまり・・・・」
「ちょ、ちょっと!何でそんな事まで判るのよ!」
「警告の警鐘の上位版で索敵能力が格段と上昇今ならこのアイテムが400G!」
詰め寄られたクイックがちょっと話を逸らそうと試みるが逆に火をつける結果になってしまった
「と言うことはこの前なんでそっちの方渡してくれなかったのよ?」
「えっと体験版はユーザー登録を・・・」
「不毛な言い争いりゅ・・・」

「ううん、この扉は開けなかったじゃなくてあかなかったのよ」
「開かなかった?あれだけ強い魔力でこじ開けられるのに?」
「この塔の扉は材質的にも強い物だけで作られていたけど、ここの扉、基本的に、開かない扉は開けていないのともうひとつ、魔法の加護で開かなかった物がある見たい」
 言い争いが一段落した一行は早速開かない扉を検証する。
「それにしてもラキシュちゃんが盗賊ナンバーワンなんて思わなかったですね。いやある意味予想通りか・・」
「何か言った?」
「いえ・・・でも魔法の鍵は解除出来ないですね・・・」
魔法の扉に手をこまねいているクイックとラキシュだがそこにプラムが胸を張って歩み出た
「りゅ。全ての根源にて元なる力をここに以て、偉大なるマナの力、魔に転じる全ての力消えうせろ・・・・」
目を細めて背中の翼を広げ、呪文の詠唱を始めるプラムはいつもの彼女ではなかった。
「すっごい!ぷ〜ちゃんすごいわね!」
「りゅっ!さっさとはいりゅ」
 プラムはまるでそんな事、造作も無い事と言わんばかりに扉の中に入っていぅた
「これは・・?何かの機械のようですね。こういったのはやっぱりリムさんがいた方が良いんでしょうけど。」
 しかし、プラム立ちが入っていくとそれに呼応するように空中にディスプレイが現れる。
「リム・・?」
あらわれた映像はある少女を写した物だった。しかしその姿は瓜二つではあるが服装が違い。そのコードネームを表すかのようにレムと言う名前を表示していた・・・。


第三楽章<開かれし古の扉
「あう〜カッセルお兄ちゃん、いったいどこに行っちゃったのかしら?」
 一方、クイック達のいるフロアより遥か上層部、ラキシュすら知らなかったがこちらには妹のキルシュの姿もあった。しかしそこにはカッセルの姿は無い。どうやら迷ってしまっているらしい
「つかれたよ〜お兄ちゃんはいないし〜どうしよう・・・」
 そう言いながら手近な壁に背をもたれるキルシュ。しかし一息つく前に効果音のような物が聞こえ何かが動き始める音が聞こえる
ポチっ・・・うぃぃーん・・・
『プログラム開始します』
「うえっ?何々?ナ、なんか動き始めたよ〜・・・」
突然聞こえた音にびっくりしたキルシュは慌てながら後ろを振り返る。するとそこは何やらボタンがびっしり配置されたコンソールのような物があった。どうやらキルシュが背中をもたれたときにそのうちのどれかを押してしまったようだ。
「はう〜止まんないよ〜」
 キルシュが混乱しながらコンソールのボタンを適当に押す。
『システム環境最適化開始します。』
「な、なんか言ってるよぉ〜。」
 するとそこに何者かの足音が聞こえてくる
「確かこの部屋からなにか聞こえたぞ。」
「はい、もしかしたらすでにスレイブさんが帰ってきているのも知れません」
 近づいてくるのはカッセル達だ。クイック達を先行していた二人はすでに開かずの白の部屋まで辿り着いていた。
『最適化終了、現在内部に6名の進入者を感知』
システム音が鳴り響く中カッセルはあわてふためいているキルシュを発見する。
「って・・おい、キルシュ?お前何でこんな所に居るんだよ?」
「あう〜お兄ちゃんだ。逢いたかったよ〜。」
「逢いたいってそれでこんな所まで来たのか?」
 カッセルに抱きつくキルシュ。ちょっと困惑なお兄ちゃん。
「お、重いって・・それより今侵入者は6人って行ったよな?もしかしたらスレイブがもう帰ってきているのかも知れないな・・」
「そうですね。システムも本格起動を始めました。速く最上階へと急ぎましょう」
 実はラキシュも進入していることを知っているキルシュだが正直に言えないまま引きずられていくキルシュ・・。
「おい、キルシュ、はぐれると悪いから一緒にいろよ。」
「スレイブのヤツが来たら一緒に逃げるにゃ〜」
「ん?フォグ。お前居たのか?」
「むき〜!」

「ここが白の部屋。ここで集められた記憶は緑の奔流となってここの先に有る黒の部屋へと続いていくんです・・・」
 そういいながら青の円水晶を緑の光へかざすリム。
それと共に水晶から青い光線が扉へと当たりそれと共にそれまで開かなかった扉がいとも簡単に開いていく・・しかしそれと共に又新たなシステムからの警告が入る。
『システム起動率90%実体化を開始。マスターの帰還を感知』
「ふふふふふ・・まさか鍵本人から来て貰えるとは思わなかったぞ」
「スレイブ!?」
 警告にあったマスターとはどうやら移転の扉を使って帰ってきたスレイブだったらしい。ちょっとぼろぼろになりながらも待ち望んでいた扉の先を見て至福の表情でカッセル達を見据えた。
「こんな事は止めろ!こんな物があったらエンフィールドは、いやこの国も滅びてしまう!」
「そんな物は関係ない。」
「何だと?」
 笑顔を浮かべながらゆっくりと開かれた扉へと近づいていくスレイブをとそれを阻むかのように立ちふさがるカッセル・・・
「・・そうだな・・例えばこの装置の使い方を知っていればおそらく大騎士であるアシュレイのヤツも世界を敵に回すやも知れぬ。」
「どういう事だ?」
 スレイブはそんなことも分からないのかといわんばかりに薄く笑う。
「ヤツの娘のローラの病を治すための治療法が見つからないらしいな。記憶を全世界で共有出来ればいとも簡単に見つかるとは思わないか?」
「だろうなアシュレイについて俺はそんなに知っているとは思わないが父親だったら娘を助けたいだろうとも思うだろう。」
「人間は好奇心の塊なのさ、未来のことは分からなくても過去の膨大なデータが有ればそれすらも容易になるだろう?」
 そのうちカッセルとスレイブが付き合わせるくらいに近づいてようやくスレイブが足を止める・・。
「あまり難しい話は読者が嫌うからな。知識を求めているとでも行っておこうか。黒の部屋には俺が最初につかせて貰う」
 そういうとそれまでの態度は一転して扉の向こうへと走り出した。
「ちょ、ちょっと待て!今回のお前システムの話持ち出しすぎだぞ!」
『・・・・・』
 その時だった。カッセル達がスレイブを追い、扉の向こうへと足を踏み入れた時だった。一人の少女がカッセル達に向かって攻撃を仕掛けてきたのだ
「何者!?・・リム!?」
 そこに立っていたのはリムとそっくりの姿を持つ少女だった。
「ユーザーコードを確認。メインフレーム=レム、侵入者を迎撃する。」
 レムと名乗った少女は姿形こそリムにそっくりだったがその背中からは機械の翼を携えてりんとした表情で侵入者であるカッセル達を見据えた。
「おそらく長い間眠っていて期間を満了した遺跡の所有権がスレイブが来たことで彼に移行されたんです」
「ンにしたって何とかなら無いのか?!」
 カッセル達はそれでもスレイブに先に着かれまいと黒の部屋へと続くであろう通路を走っていた。しかし通路の中空からはレムがその進路を阻むかのごとく光の矢を立て続けに放ちその足は遅々として進まなかった。
どぺっ!
「キルシュ!大丈夫?」
「あぁ!ラキちゃん〜それにクイックお兄ちゃんにぷ〜ちゃんだ!」
 何回かレムの洗礼に会い、ぼろぼろになっていたキルシュが足をとられ、そのまま転んだ所に下のかいに居た第二波が援軍にくる
「進入者の増援を確認。迎撃レベルを3から4へ移行」
通路に聞こえるレムの声はまるで賛美歌のようにやさしいながらも残酷な響きをもち、立ち上がろうとするキルシュに向けられる。
「台地に眠れる清い水晶の力を!」
「天界を焦がす牢獄の火炎よ!」
 およそ通路を埋め尽くさんとするレムと記憶装置の放った光の矢とそれを阻むプラムのニードルスクリームの水晶の欠片と追加攻撃を阻止するラキシュによるフレイムジェイルによって辺りは光と音、そして魔力の力場に支配された。
「おい!レム!何でおまえはそこまでして戦うんだ!」
 強力な魔力の干渉で無力化したレムにカッセルがたずねる。
「わたしに命じられたのは土地の記憶を蓄えること。それしか命令されて居ない。その記憶をどうするかはマスターが決める事。」
「しかしそのマスターはもう失効したはずです。あのスレイブと言う男は魔法王国とは何も関係の無いはずです。」
クイックも力をこめて説得するがレムは困惑した表情でこちらを見つめてくる
「クイックさん。レムはわたしよりも前に記憶を集めるためだけに作られました。それは相当機械的なはずです。彼女に何を言っても無駄なんですよ。スレイブさんの方はわたしが居なくては目的は達する事が出来ないはずです・・今は彼女を何とかしましょう・・場合によってはそのまま・・・」
 悲しそうにそうリムが伝える。スレイブが部屋に着くまでにはまだ時間がかかるようだ・・・


第四楽章<とらわれし思い
「お父さん。」
「大丈夫。みんながスレイブをやっつけて全部丸く治めてくれるよ・・」
カミラが帰った後のニューフィールド邸。そこには変わらず神の奇跡で治療を施すミリュウとローラの他に和泉飯店のラビナの姿もあった
「あの写し鏡の迷宮に入ったとき・・わたしが病気だって始めて知らされた日の事を夢に見てたの。」
「神の奇跡でも全ての人に利く万病の薬ではありません。人は神から与えられた運命のとおりに自らの寿命を全うします。人間の手で変えることが出来るのは宿命だけです」
「ミリュウ!確かにそうだけどその言い草は無いよ。自分の身内が苦しんでたら助けようとするのはミリュウの神の言う所なの?」
 ミリュウの言い方に腹を立てるラビナ、しかしその口調はミリュウの事を良く知っているからと言う思いからきた物だ。
「ありがとうラビナ、ミリュウ。でもパパもあの迷宮にいたって事は何かの夢・・・見ていたのかなわたしの事・・どう思っているんだろう・・・」
何か暗い雰囲気に陥ってしまう室内。それを見て取ったラビナがポケットに何かの感触を感じ取ってそれを手にとった。
「そうだ・・これこの前仕入れてもらった珍しい符なんだけど・・・相手の夢の中に入ることの出来る符なんだ。」
ラビナがそう言って取り出したのはちょっと古びたぼろぼろの符だった
「でもそれ・・かなり古びているけど大丈夫なの?」
「判らない・・でもこういった系の精神干渉の符は入ったまま取り込まれる場合があるから気を付けなきゃいけないけど・・・」
 様は相手の精神に入ったまま元の体に戻って凝れない場合があるという
「でも、もしアシュレイ様の眠りつづける原因が御自身の夢の中にあるとしたらこの方法でしか助けられなくない?」
 危ない賭けと知りつつもそのメリットも大きな物だった。そこでミリュウが符の使い方に付いて聞いてみる。
「符を入り込みたい人に張って、その人の体に触れている人が次々と入る事が出来るの。」
「スレイブの持って居たあの結晶。あの結晶には何か秘密があるのか・・・もしそれが判るならこんな掛けを無理にしなくても良いのに・・・」
 するとそこに図書館へ調べ物に行っていたカミラが血相を変えて入ってくる。
「おい、大変な事が判ったぞ。あの結晶に付いてなんだが・・」
「ナイスタイミングだね〜。んで何が判ったの?」
 どうやら紙面も少なくなった苦肉の策らしい・・・
「それがあいつはアシュレイ様の意識に結界を張りやがったんだ。その意識は水晶で固められて今もあのままで眠りつづけて居る。スレイブのもっているあの水晶がそのままアシュレイ殿の状態らしい。」
「と言うことは内側からあの水晶をどうにかするかそれこそスレイブをどうにかして水晶を奪うしかないって事・・?」
「内側から?どういうことだ?」
 事情を知らないカミラはミリュウに説明を求める。
「かくかくしかじか・・・あぁ文語は便利ね〜。とにかくスレイブをどうにかするのはかなりの実力が居るし内側からどうにかするってのも誰でも良いってわけにも行かないしリスクも大きいわ。」
「もちろんスレイブはみんながどうにかしてくれるとは思うけど、内側に入るのはどうする?ローラちゃんが良いって言うなら皆協力してくれるよ?」
「みんな・・・ありがとう・・・」

かくてここにアシュレイ救出作戦がはじまるのであった・・・・
イベントアイテム紹介
青の円水晶
蜃気楼の塔の演算扉を開くための水晶球。

銀の糸
空間をゆがめダンジョンから抜ける事の出来るマジックアイテム。

黒き魔剣
スレイブが持っていた黒い剣。見た感じのろわれそうな気もするが装備するとかなりの練金魔法が使用可能になる。
余談だが某変体魔術師さんのもっている闇の剣とは若干デザインが異なる・・・(笑)


例えばこんなアクション
○アシュレイの夢の中に入りアシュレイの水晶を溶かす
○スレイブの行く手を阻む
○レムを説得する

マスターより
私事ですが複合プリンターを買いました。おかげでコピーにコンビ二に行かなくても良かったり(笑)
そしてコンビ二まで行かなくても良くなり浮いた時間でゲームをするっと(笑)
さて第一部もいよいよ大詰めとなりました。これが終わってからは引き続き第二部に続くわけですが出来れば次回3月のガタケで第一部最終話を渡せればな〜とか思っている次第です。


さて、今回は動ける場所がそんなに無いかも知れません。蜃気楼の塔は戦闘必至ですので腕に自信の無い人はエンディングに何がしたいかを重点的に書いていただければよろしいかと思います〜
そしてNPCの動向に着いてですが
ローラ&ラビナ
アシュレイの夢の中に入り、救出作戦

カッセル&リム
蜃気楼の塔にてスレイブを止める

とこんな状態になって居ます。
今回ちょっとスランプ気味で遅延になってしまい申し訳ありませんです〜。



次回の締め切りは2/22日になります

P.S悠久は電車の中で構想を練るのですがこれが終わった後の第二部のねたばかり浮かんできてしまいこちら側が書けないという間抜けをしてました〜